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書籍「心の病は治せる」からの内容紹介       LinkIcon書籍「心の病は治せる」書評

パニック発作の条件反射(詳しい説明ー著書内でも特に専門的な難しい部分を抜粋しております。 ここに関しては、流し読みされる程度で構いません。著書全体は読みやすく書いております。)

パニック障害として知られる心の病は、パニックの発作を恐れるがゆえに行動半径を狭め様々な規制の中で人生を狂わせてしまうのです。ある日突然に体験した身体症状を伴ういたたまれない不安や死の恐怖を伴う発作は記憶に深く刻まれ再発を恐れるようになります。それほどの苦痛を伴うものなのです。この症状は、体験者にとっては何の前触れもなく突然に発生するので、またいつ起こるだろうかという強い不安に襲われます。

しかし、パニック発作が起きる前にさかのぼれば、必ず不満や精神的苦痛の長期間のストレスにさらされているのです。もちろんその背後にはトラウマが潜んでいます。そのことに目を向けることでパニック障害は治していけるのです。予期不安という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、人は誰もが、何かの症状に脅えている(不安がっている)と、それを避けたいと思うがあまりに意識を向けすぎて身体感覚を観察してしまうものです。そうしていると全く別の原因で起こっている同じような身体感覚に過去に経験した感覚ではないかと予期し不安になり、結果、脳に刻まれた条件回路が活性化し過去に体験したのと同じような症状を作り出していくのです。これが予期不安と呼ばれている現象です。過去に経験し脳に刻まれた出来事は、条件回路として脳内に存在し続けますが、予期不安によって、これが、条件反射のメカニズムで活性化され蘇るのです。

ここでもう少し詳しくパニック発作の条件反射をみていきましょう。パニック発作を人工的に発生させるには、過呼吸させるか、あるいは二酸化炭素含有の多いガスを吸入させることによって、また乳酸ナトリウムの静脈内投与によって引き起こすことが出来ます。これらの処理は自然に起こる発作の際に典型的に認められるのと同様の内的シグナル(身体的感覚)を人工的に引き起こすからです。パニックは心拍数や血圧などの交感神経の興奮によって起きる現象による、間違ったフィードバックを人工的に作ることによっても誘導できるのです。

パニックが起こりつつあるという不安による信じこみは、身体的感覚と本格的なパニックの発現を結びつける事象の連鎖における重要な接点といえます。パニックで苦しんでいる人の脳内でどのように条件付けがなされているかを考えてみましょう。人工的にパニックを誘導した時に引き起こした身体的感覚は、内的シグナルとしての条件刺激として作用するようになります。パニックを一度経験するとその警告の徴候を学び取り、それらの内的シグナルが起こると、(それが人工的に引き起こされたものであっても)パニックが起こりつつあると感じて不安になります。この身体的感覚の認識機能による評価はこのシステムをパニックへと駆り立てるのです。

このように、誘導されたパニックや、おそらくは自然発生のパニックも、過去のパニック発生の際に起こった内的刺激に対する条件反射なのです。条件反射を起こす条件刺激は外的なもと内的なものがあります。内的なものとしては、たとえば過呼吸に反応して起こる血圧の上昇でも条件付けされた恐怖を引き起こす刺激になります。また血圧がたまたま緊張した状況に置かれて上昇した場合、以前に過呼吸によって引き起こされ血圧レベルが上昇した有害な感覚が引き起こされます。これらの感覚は認知され、パニック発作の開始を示すものと解釈されてしまうのです。これに対し、条件刺激(血圧の上昇)は容易には気づかれないことから、パニックは何の誘引もなく自然に起こったように見えるのです。外的のものとしては、もし最初のパニック発作が、電車の中で起こったとすると、電車の中にいることが、パニック発作が起こりそうな気分にさせてしまいます。パニックを体験した時の外部環境が条件刺激の役割を果たすことになるのです。

扁桃体は、心拍数、血圧や二酸化炭素の血中レベルその他の体内の生命維持に関する情報を受け取ります。例えば、体内器官の状態についての内的シグナル(条件刺激)を血中の二酸化炭素のレベルについての情報(非条件刺激)と統合したとしましょう。そうすると、扁桃体は同時に起こっている事象との間にシナプス結合を形成することになります。扁桃体からの出力によって交感神経系を強く活性化するという点で内的シグナルと炭酸ガスの効果は同等の作用を持つようになるのです。このようにして、いったん交感神経系が活性化されると身体的な刺激状態に気づきます。意識にのぼる記憶によって、経験されつつある徴候は過去のパニック発作で経験した発作が起こりつつあるようだと判断するのです。このようなパニックが起こりそうだという意識的な記憶や考えによって、海馬や大脳皮質から扁桃体への投射が交感神経系の更なる持続的な活性化を引き起こし、典型的なパニック発作を引き起こします。

また、心拍数や他の身体機能の状態について間違ったフィードバックが働いた場合、事象の連鎖はおそらく大脳皮質による認識として始まり(たとえば心臓がバクバクしてきた、目の前がフラフラしてきたと考えるような)、次に過去のパニック発作として頻脈やめまいが起こったという経験の記憶を想起する手がかりとなります。このような意識的な思考と明確に意識された記憶は、大脳皮質のいくつかの領域と海馬から扁桃体へいたる投射によって、同様に扁桃体の興奮の引き金を引き交感神経の興奮による情動表出を起こすのです。こういった辺縁系から生じる情動の表出が、さらなる不安や恐怖反応を強化していきます。神経症性の恐怖をやわらげることが難しいことはよく知られています。

ラットで、ある音なり光なりに条件付けられた恐怖反応は、もし扁桃体へ投射する特定の皮質領域(内側前頭前野)が損傷を受けると消去することが非常に難しくなるといわれています。内側前頭前野皮質は外界の出来事や扁桃体で感じたこと(例えば、恐怖感)をもとにした、扁桃体からの出力を制御する働きをしているようです。

ラットのこの領域を損傷したところ、恐怖条件刺激が与えられると、損傷を受けていないラットが恐怖反応を示さなくなった後でも、引き続き恐怖反応を示し続けるという実験結果があります。神経症の人も皮質の損傷を受けた扁桃体は、刺激がもはや危険とはかかわりのないことが示されても、しつっこく恐怖反応を示し続ける。扁桃体の興奮による恐怖反応を鎮めるには、前頭葉の働きがなくては抑制をかけられないということがわかってきました。扁桃体を制御するためには、いわゆる理性の働きが必要なのです。

また、人が前頭葉の損傷を受けた場合の特徴のひとつには固執があります。すなわちいったんその動作が適切でないと判断しても、それをやめられなくなるのです。固執(こだわり)はふつう認知あるいは思考の障害と考えられています。実験によると認識性固執は前頭前野皮質の外側領域への損傷によって引き起こされ、情動性固執は内側前頭前野の狭い領域の損傷で引き起こされたと報告されています。前頭前野の外側部と内側部は変化する状況に行動を適応させつつ、前頭前野が協同して働く領域によって定められている認知あるいは情動の機能に関連して同じ作業を行うのでしょう。

最近の研究によれば、海馬と同様に前頭前野は過剰なストレスホルモンの放出を制御するように働く。ストレスが長引くと、この負のフィードバック制御機能が崩壊するので、前頭前野と海馬は両方とも障害を受けるといわれています。ストレスによって引き起こされる前頭前野の機能低下は扁桃体へのブレーキ(制御)を緩めて、新たな学習は強化するが、以前の学習は消去しにくくなり、以前に消去されたはずの恐怖条件付けなども再発させるような働きをすることもあるようです。しかしながら、不安障害で悩んでいる人が、前頭前野に損傷を負って生活している訳ではありません。脳の損傷における極端な例の説明と判断してください。一般には、ストレスによって脳機能に異常が起き電気的あるいは内分泌の微妙な変化が関与しているだけのようです。

パニック発作で苦しんでいる人は、ある時ある場所で経験した症状がまた起こりはしないかと不安で避けるようになるのですが、そういった、以前に症状を起こした場所や状況(条件刺激)は扁桃体を無意識的に活性化し、同時に側頭葉の記憶系にも到達し、最初の外傷体験を呼び起こし、その外傷体験を呼び起こした最近の出来事を思い出させてしまいます。このような思い出し意識された記憶は(扁桃体によって恐怖反応が無意識のうちに活性化されたために)、強い情動反応が引き起こされたことを自覚することとあいまって、不安と当惑を意識にのぼらせるのです。

情動反応が起こったことの認識の流れは、今度は大脳皮質と海馬から出て、さらに扁桃体を刺激します。そして、扁桃体の反応が身体的に表現されると、皮質は情動表出が進行中であるということを認識し続け、さらに不安感と不安に関する記憶を強めてしまいます。脳はこのようにして情動と認識の両方の興奮の悪循環にはまり込み、燃え盛る炎のように勢いを増してしまうのです。こういった症状を解消するためには、退行催眠によりパニック発作が起きた因果関係を明確にし、前頭前野(理性)による扁桃体(情動)のコントロールを可能にすることです。 ( 以下 略 )